入江のほとり 長崎透詩集

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 1955年9月、詩洋社から刊行された長崎透の第2詩集。

 

 詩作遍歴一拾余年、これから向苦悩する日々と、永世を想ふ時、私の詩作日は尚浅い。処女詩集「真畫野」出版以后まとまつたものとしては、これは約拾年后に出す第二の詩集ではあるけれども作品は「眞晝野」と何れも前后して昭和十八年頃、私がかつて限りない愛着の日に住み侘びた湘南のある入江のほとりの手記である。
 海へのノスタルヂアと云ふか、私は何時も白い岬に停づんではこの入江にみなぎる海の光にみ入つた。そして思ひ見る事は、愛すると云ふ事は如何に苦悩である事か、そしてこの愛苦の彼岸に道を見出すために如何に人は精魂を盡すか、そしてその愛のために生れ、何時も愛し、そして一刻も愛せずにはいられない何と云ふ人間の情念の深さである事か、それはあたかも海の底ひに陽の目をみなくとも美しく光りひそむ何物かの様に、潜在せる愛に向つて熱情に驅られるまゝに、ひたむきに身を投げる者にこそ至上の愛は得られるのではないか。
 愛を求めてやる瀬なく遍歴する魂の永遠の姿をつねに私は海にみるのである。私が詩の愛を見失なわない限り詩が悲しい玩具ではない様に……。
(「あとがき」より)


序文 前田鐵之助

  • 入り江のほとり

あとがき


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