花咲く乙女 小糸のぶ

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 1965年5月、春陽堂書店から刊行された小糸のぶの長編小説。画像は1974年25刷。「平凡」連載。

 

 終戦によって、わたくしたちは民主主義の明るい光りを恵まれましたけれども、敗戦の現実の混沌の世相の中に、大きく浮かび上がった問題の一つとして、性道徳の退廃があげられました。新しい解放の時代は、性の問題を、一面においては低劣卑わいなエログロへの、著しくゆがめられた解放へも導いたことはいなめない事実でした。ことに、若い人びとが二度ととり返しのつかない泥沼のうずに巻きこまれていく姿を見聞きするにつけ、未熟なわたくしの筆によってでも、なんらかのお役にたち得ることができましたならばと考え、この小編を意図しました。
 幸いにも、日本性教育協会会長永井潜博士、性科学研究所長福岡武男先生のたかたから、医学上の点に関しましては、ご懇篤なご教示をいただき、雑誌「平凡」に連載いたしましたところ、多くのかたがたからの励ましにあずかり、ようやくここに一巻にまとめて上梓する運びとなりました。 性の問題を、単に性の問題としてきり離して考えるのでなく、社会の諸問題との関てとらえなければ、ふじゅうぶんのそしりはまぬかれませんけれども、むずかしいお説く、おもしろく読んでいくうちにも性教育の重要性を訴えたいと希望いたしました。近く映され、ひろく上映されることになっておりますが、些少なりともみなさまのつれづれに楽しみのひとときをお贈りすることができましたならば、わたくしの喜びこれに過ぐるものはございません。
 顧みますれば、わたしが「母子草」をあらわしましてからこれはわたくしの第三の著作です。数少ない作品のうちでも、はじめての試みでありましたので、これには力の限りをつくしましたことを自負いたしております。おおかたの叱正にまち、さらによりよき著作にまい進いたしたく、一言添えさせていただきました。終わりに、これを書くにあたり、いろいろとご協力、ご指導くださいました、永井潜博士、福岡武男先生、松竹プロデューサー石田清吉氏、平凡編集長清水達夫氏に深くお礼を申し上げます。
昭和二十四年師走
(「あとがき」より)

 
目次

  • おとなのしるし
  • 花におえども
  • 思慕せつなく
  • 草ヒバリ鳴く
  • ふくらむ乳ぶさ
  • 思いただ一筋に

あとがき


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