1975年9月、五月書房から刊行された芳賀檀の第1詩集。
これは永い年月をかけて書いた多くの詩の中から撰んだ、小やかな、つましい詩集です。とてもこれが私の骨骸、完全な脊椎とは云へません。併し兎に角、私の一部であり、多くの苦しい時間と悲しみが雪の様に静かに積ったのです。R・M・リルケは「ドイノの悲歌」を完成した時、恩人でもあり、恋人でもあったタクシス公爵夫人に書き送っている。
「……私は勝ったのです。堪へ抜いたのです…。」私には訴えるべき公爵夫人なく、又捧ぐべき恩師エルンスト・ベルトラム教授も今はこの世にはいません。又どうしてリルケの偉大さなどに較べる事が出来ましょう。私など余りにも小さくて…(troppetit)併し、ただ一つ言えることは、「私も堪へ抜いた」のです。そして、涙の中にも「歌うことを止めなかった、」のです。そして今ベルトラムはじめ、その他お世話になった人々に心からり感謝を捧げたいと思うだけです。
(「あとがき」より)
目次
- 薔薇の悲歌(カデンツ)
- 貝殻の歌
- ハムレット・ドンキホーテ・秋の日の出会
- アテネの悲歌
- 第一の悲歌
- 第二の悲歌
- 第三の悲歌
- 第四の悲歌
- 第五の悲歌
- 第六の悲歌(オルフォイスの書)
- 友情の書(一)
- 友情の書(二)
- ピカソ・モジリアニ
- ベートーヴェン(春のソナタ)
- 三島由紀夫の死を悼む(三部曲)
- 天使について(付、道化者)
- 時間について
あとがき