1993年10月、沖積舎から刊行された蛯名泰洋の第1歌集。装画は渡部満、装幀は戸田ヒロコ。
〈いつか訪う星の伝言板にもあらん『下ノ畑ニ居リマス賢治』>蝦名泰洋はこの作のとおり、すでに廃墟と化したイーハトーブの無人駅からの一人だけの乗客として、銀河鉄道の最終便に乗りこむ。無論、行先は『歎異抄』の言う意味での「地獄」であり、その火だけが作者の純潔な「氷った焰」を溶かすことができるからである。<斧二本ふるえて抱き合うごとき父という字も淋しからずや〉は、おそらくその澄明な焰に照らしだされた大いなる父の――即ち、万有の母胎としての太虚の、作者の意識の深層から創出された秀抜な隠喩であろう。
(「帯文/真鍋呉夫」より)
目次
書評等
現代歌人ファイルその19・蝦名泰洋(トナカイ語研究日誌)
「梧葉」42号(竹の子日記)