1988年11月、すばる書房から刊行された丸地守の第8詩集。著者自装。
人間存在の意味を考えるとき、私はどうしても「死者」のことに思いが至る。「死者」が〈生〉と〈死〉のあわいで、ぎりぎりの時間をどう過ごしたか、死への時間をどう生きたか、ということを思いめぐらす。
とくに不条理によって死への道を歩んだものへの思い入れは格別のものがある。「故なき死」の時間の前で「死者」たちのこみあげてくる感情を私は〈生〉の原点として考えたいのだ。 私が死せるものを「死者」と呼ぶとき、「死者」は私の内部宇宙で「生者」として存在する。それは現実に生けるものよりも切実に〈生〉の意味と、その尊厳を啓示してくれるからでもある。
私はこの詩集でそのことを表現したかった。また、私の貧しい言葉で〈生〉と〈死>を語るとき、その両者を結ぶ緊張の糸の、微妙なゆれのなかに若し〈愛〉などと呼べるものを、少しでも感じていただけるとしたら、私の至上の喜びである。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰそこの位置に
- 祝祭
- そこの位置に
- ぼくらはいま
- 朝ぼくは
- 港
- 微熱
Ⅱ誰が斧を
Ⅲ死者たちの海の祭り
- 巡礼
- くろい点のようなものが
- 沼
- 死精
- 死者たちの海の祭り
あとがき