雪降る音 井越芳子句集

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 2019年9月、ふらんす堂から刊行された井越芳子の句集。装幀は間村俊一。青山叢書第138集。

 

『雪降る音』は『鳥の重さ』に続く第三句集になる。平成十九年暮れから平成三十年四月までに作成した作品の中から三七二句を収めた。
 この間、父が逝き母が逝った。父の葬儀の日、遠くに見える桜がいっせいに吹いていた。母が逝った日、五月の風が庭から入り、母は一層美しかった。父と母から「死」を教えられた時間となった。父と母に倣ってゆけば、死はもう怖くない。この日の光を生涯忘れない。
 両親の死を詠んだ作品はできなかったという悔しさがある。力不足を思い知らされた。集名「雪降る音」は、平成二十八年一月、三が日を家族と過ごし、残りの休暇を使って作品を作るために一人で八甲田へ行ったことで生まれた。たくさん降る雪を見たいと思った。この旅は、父母を思い、家族を思い、俳句と格闘する気持ちを確認した大切な時間であったと思う。
 雪降る音の向こうに母がいるような気がした。私が希求する何かがあるような気がした。
 認識をもので捉えてゆくことが大きな課題だ。どう表現してゆくかが大きな課題だ。ここでたまった言葉をすべて空っぽにして、また、一から出発したい。

 

 

目次

  • 鳥のかほ 平成十九年~二十二年
  • 月桃の実 平成二十三年~二十四年
  • 火を焚けば 平成二十五年~二十六年
  • 月の家 平成二十七年~二十八年
  • 真朱 平成二十九年~三十年

あとがき


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