花影 原石鼎自選句集

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 1937年6月、改造社から刊行された原石鼎の自選句集。


 本句集は改造社のしきりなる懇望により、二萬に近い試作句稿中より約一千句を選出したものである。
 年譜に見らる如く、十六歳頃より俳句をつくりはじめたのであるが、その頃自分の句を記載して置くなどのこと思ひもよらぬことで、大方は忘れてしまうた。それでも餘程後年になつて手記してゐたものゝないでもなかつたが、いつしかそれさへ失つてしまうた。のみか自分の句を書き溜めて置くやうになったのは、つい大正八年頃よりであつたと思ふ。そのうち一二年分の手帖を落失したこともあったので、二萬に近い句もすべて現在手許に明記されてゐるもののみの數である。
 本句集には、私の深吉野に假住中、ホトトギス雑詠欄に投じて虚子先生の選出にかゝる第一句目のものより記載した。これは丁度私の俳句的生活に志す起動ともなつた為であることはいふまでもないが、當時俳壇の風潮の上からいつて拙句の世に認められはじめたのもその時よりであつたので、それを紀念する上からいつても、最も至當と思ったからである。
本句集中、間違はれ易い言葉が數句ならず存在すると思ふ。例へば六頁にある句の「川烏」なども其一例で、曾つて、此文字を解して河原にある鳴云々のこともあつたやうに思ふが、之は「かはがらす」といふ一種の鳥、また「山柿」とても、山にある柿といふ意味でなく、山にあつて而も「やまがき」といふ一種の野生の柿であることはいふまでもない。さういふ所に一應氣をつけもらへば、さして難解の句は無い筈である。
(「おくがき」より)


目次

  • 深吉野篇
  • 海岸篇
  • 都會篇(一)牛込・麹町時代
  • 都會篇(二)龍土町時代
  • 都會篇(三)本村町時代

著者年譜
おくがき


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