2002年7月、雁書館から刊行された浜田康敬の第4歌集。装幀は小紋潤一。
私は、一昨年九月に生まれ故郷の釧路に約五十五年振りに「帰る」ことが出来た。釧路に帰るときには、そこが自分の生まれ故郷であるという意識を持って、必ず大事に「帰ろう」と思っていたのだが、帰って感じたことは、釧路には一時期、啄木も住んでいた、という自明のことに、あらためて遭遇したことである。
釧路の港を見下ろす米町公園には「しらしらと氷輝き千鳥鳴く釧路の海の冬の月かな」という啄木の歌碑が建っている。この歌碑に私は微かな思い出があった。それは父が住職をしていた寺がその近くにあって、その歌碑が当時の私の遊び場所であったのである。
そんな思い出の詰まった啄木の碑を前に、私はそのとき「歌集を出そう」と決心をしたのである、啄木との関わりでいえばそのとき、啄木の碑はみごとな輝きをしていた。その碑を手触りつつ、私は不意に啄木を意識したのである。どうということではないのだが、私の生まれたこの地釧路に、啄木も一時期住んでいたという事実、そのことだけで私はそのとき、啄木をより身近に感じたのである。それだけのことである、
(「あとがき」より)
目次
- 四季が丘
- わが家近辺
- 雨天順延
- 家族の肖像
- 「い・かんそう」
- 会議
- 抜歯
- 野良猫
- 今年の終り
- スポーツ賛歌「野球篇」
- 詐欺師
- 高千穂
- 森林浴
- 母のこと
- 文字
- スポーツ賛歌「柔道篇」
- 犬の遠吠え
- 昼の月、そして雨
- スポーツ賛歌「ゴルフ篇」
- 声帯模写
- 夜景
- ジョギング
- スポーツ賛歌「体操選手篇」
- 川
- 黄の花
- 家出と出家
- ピンチヒッター
- 日章旗
- 貧乏食
- 天の気配
- 力士
- 年賀状
- 「のど自慢」
- スポーツ賛歌「オリンピック篇」
- 名前の由来
- うたうとは
- 雨の歌、そして夕映え
- 魚市場、また雨の歌
- 電話
- 秋
- ひとり笑い
- 「偉人伝」
- 辞職
- 釧路・啄木
- 故郷の雨
あとがき