体温 多田尋子

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 1992年3月、講談社から刊行された多田尋子(1932~)の短編小説集。装画は島田鮎子、装幀は中島かほる。「体温」は第105回芥川賞候補作品。

 

多田尋子氏の「体温」に強く惹かれた。ここには、八年前に夫を失ってから孤闇を守りつづけている三十も半ばを過ぎた女と、十歳になるその娘との、おおむね平穏な日常が、簡潔で淡々とした、けれども、まさしく体温のぬくもりを感じさせる気持のこもった文体で静かに写し出されている。小説の文体としてこれ以上オクターヴの低いものがあるとは思えないが、そんなささやきにも似た文体でありながら、読む者の耳に、胸に、実に自然に通って、登場人物の一人々々を鮮やかに書き分け、部屋を貸している女子学生たちとのやりとりを闊達に描写し、自分との再婚を望んでいる亡夫の元同僚の一人との情事も過不足なく描いて、人生を色濃く感じさせる。
(「多田作品を推す芥川賞選評/三浦哲郎」より)

 

目次

  • やさしい男
  • 焚火
  • オンドルのある家
  • 体温

あとがき


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