1985年8月、小沢書店から発行された平出隆の第二評論集。
最初の評論集『破船のゆくえ』(一九八二年)に収めそこねたものと、『破船』以降に書かれたものとから一冊をまとめることになった。ご覧のとおり短めの時評的な文章が中心となる。取捨・構成を長谷川郁夫氏に委ねた。
「攻撃の切尖」という、この署名は威勢よく映るかもしれない。だが著者からいえば、切尖なんていかにどんよりと眠りにふけるものであるか、ということの方に思考をあつめたつもりでいる。(「覚え書」より)
目次
Ⅰ
- 断章31
- たたかいとしての詩形式
- 雲をつなぐもの
- 骨とサボテン
- がらくたと緑閃光
- 自然・観察・手記
- 溝の感触
- あるく詩句
- 蝿殺しの本
- 白い気圏で
- 舞いのつたわり
Ⅱ
- 詩学」と「詩論」
- レトリックの否定
- 二重のロマンティスム
- 現実に執する
- 声の転生
- 垂直性の夢
- 破れとしての詩形式
- 根源の喪失
- 見切られる戦後詩
- 海のむこうの現在
- 「私」のはじまり
- 散文性への視点
- 奇妙さの石
- 詩と呼ぶ必要
- 境界について
- 「箴言」と「うた」
- カタログの方法
- 日めくりの方法
- 記述の腰つき
- 異教としての詩
- 未開の詩の皮膚
- 反動のこころ
- 不思議な影像
- 「いかに」ののちに
Ⅲ
- 水駅まで――荒川洋治
- 壜からの霧――堀川正美「古風なベル・カント」
- 日がな啼く歌――白秋の童謡
- 退路なき肉体――佐佐木幸綱『直立せよ一行の詩』
- 夜の河白く――伊良子清白「漂泊」
- 盲ふる感覚――白秋断章
- 白紙へのツァイス――宮澤賢治「林の底」
- 滅びへの注視――『新編北村太郎詩集』
- 廃墟という鼓膜――吉増剛造『静かな場所』『螺線形を想像せよ』
- 虚からの敵対――高橋睦郎『王国の構造』
- 埋滅とそののち――安藤元雄
- 形式の両極性――那珂太郎『詩のことば』
- 螺旋運動への執着――渋沢孝輔『薔薇・悲歌』
- 詩人の血――入沢康夫『ネルヴァル覚書』
- 言語の消却 時間の消却――北園克衛
- 自然詠と光学――賢治の歌稿
- キャッチボールの円周率――寺山修司
- 無二の形態――『孔雀船』と現代の詩