1991年9月、河出書房新社から発行された稲葉真弓(1950~2014)の第二詩集。
人が人に伝えるべきことはなんなのだろう。
あふれる活字の中に身を置きながら、しかしそれらは私が人に伝えたいこととは、あまりにも大きなへだたりがあるような気がする。
小さな吐息にも、曖昧な記憶の断片も、呑み込まれたまま忘れられていく言葉も、人が人に伝えるべき言葉のひとつぶではなかったのか。消えていく時間、その日、その時の感情……。詩を書くことが日記を書くように、一日の終わりにあった日々、私は途方もなく幸福だった。ぽっかりと開いた個人的な、極めて静かな真夜中の時間、言葉は生まれた。そんなふうに細々と生まれた詩の数々を一つの形にできたことが、いまはなによりもうれしい。(「あとがき」より)
目次
- UTA・KATA
- 夜に棲む魚
- 夜明けの桃
- 少女
- 幾度目かの飛翔
- 五月
- 水宿
- 水都幻想(めぐり)
- 円寿
- アクアリウム・ランド
- 小さな旅
- あの奥
- SO IN LOVE
- 優しい森
- 雪崩
- 別荘地にて
- 百合の時間
- アランフェスの青
- ズクー(ZUKU)
- 八千八百万のオーロラ
- 夢の地図
- リフレインの季節
- サヨナラの村