博物詞拾 相良平八郎詩集

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 1980年6月、書肆季節社から刊行された相良平八郎の第3詩集。装幀は政田岑生。

 

 詩集「博物詞拾」は私の第三詩集です。この詩集には第二詩集「橋刑夢飢」(七六年刊行)以後に発表した詩十四篇を集めました。詩の配列は作成年月日を無視して性格の違う作品を交互におき、私の感情のヴァリエーションにしたがって並べてみました。第二詩集では詩を書くことの困難さから、肯定することよりも、否定することによって、思考の正しさが成立するような詩を書いたつもりです。しかし、自己の内面に密着した綿密な論理性、明晰性を求めるあまり、それだけでは描ききれない世界のあることを感じました。つまり、抑制のある言語表現と思考の形式を構築すればするほど、詩の内容がやせおとろえ、貧しくなっていくような気がするのです。
 このような苦悩にたいして、ひとつのヒントを与えてくれたのは、人類学者岩田慶治氏の「コスモスの思想」という本でした。それは、文明が失った初源の眼を、耳を、心をとりもどし、まとまりのある、調和のとれた宇宙を持ち、それとかかわりを持つということです。しかし、いまの私には調和のある大きな世界を構想することはとてもできません。無理に構想すれば、私自身について嘘をついていることになります。今回の詩集で試みたことは、第二詩集で行った否定の論理性、明晰性を継承しながら、最小単位の物、あるいは言葉についてのコスモスの世界を考えるということです。つまり、このような小さな試みを積み重ねていけば、より大きな世界が見えてくるのではないかと思っているからです。そして、このような発想をささえてくれる形式として、散文詩形があるのだと思っています。しかし、この詩集では意図だけが大きくて、実作が必ずしも反映しているとはいいきれませんが、自省の意味をこめて世に間うてみることにしました。(「あとがき」より)

 

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あとがき


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