1973年3月、山梨シルクセンター出版部から刊行された中江俊夫(1933~)の第6詩集。
収録作品はおよそ一九五〇年十一月より一九五六年二月までの間に書いたものである。この五年数ヵ月間の大部分の仕事をすでに僕は二冊の詩集として、――『魚のなかの時間』は第一芸文社から(一九五二年十月)、『暗星のうた』は的場書房から(一九五七年十一月)発表したわけだけれど、今回二冊の詩集に含まれていない、詩作をはじめて数力月の初期詩篇も、この中江俊夫詩集第一集に収めることにした。
初期詩篇をノートに清書して、僕は幾多の転居にもかかわらず後生大事に所持していたわけだが、もうそんなふうな執着が、この頃は馬鹿らしいものに思えてきていた際なので、良い機会だったと思う。僕の年齢になれば、さすが昔の仕事を見て、たかがこれだけの愚にもつかぬものに、よくもまあ熱中してきたもんだと愛想のつきる思い以外、抱けない始末。ただ個人的な思いばかり押しよせてきて、やりきれない。
なにもかも清算したい。この第一集全体がそうした意味での僕のあやまちのそもそものはじまり具合を示す、初期の悲哀の塊りだ。
(「後記」より)
目次
初期詩篇
- 枝々
- 草の茎たち
- 里
- 母
- 雑木達
- 藤戸町の山
- 第一の生の日
- 天界の草たち
- 木の間
- 大宰治
- 無題
- 白い蛾のいる部屋
- 都会
- 空洞
- 斑猫
- 真黒い楓
- ある音
- ビルの窓の景色
- 月光の習作
- 伝説
- 黄昏
- 夕陽
- 真実
- なまけ者
- 満州人の葬式
- 奉天の郊外
魚のなかの時間I
- 物音
- 記憶
- 夜
- 地球
- 夜と魚
- 人影と魚
- 山
- 夕方
- 雲
- 街
- 孤独について
- 身体
- 父の故郷は
- 犬
- 廊下の風
- もとの景色
- 草原を見つめる馬
- 一九五二年
- 鴎
- 記憶のない薄明
- 空とひかりのひと
魚のなかの時間Ⅱ
- 夜明け
- 地上で
- 街
- 樹
- わたしは
- 山
- 秋について
- 春
- 空
- 子供の家
- その日
- 海
- 窓
- さびしい太陽
- 街燈
- 車
- 河口
- 山
- 森
暗星のうたⅠ 星
- 椅子
- 雨
- 夕暮の
- 殻
- 海上の
- 波
- 肉体
- 水平線
- 石
- 古びた靴
- 記憶
- 広さが僕を
- 私の喜びは
- 言葉
- 季節
- 顔を洗う
- 田園
- 自然について
- 風景
- 春
- 春
- 田園におちた風
- 家族
- 十月の夕暮
- 夜と牙
- 列車
- 星
- ねじれた水道栓から
- 雨
暗星のうたⅡ 太陽・生
- 夏
- 血が流れ
- 偽りの昼のために
- 通勤者
- 時はとまった
- 暗い大地の血管を
- 死は別の
- 生
- 歯の子供
- 運動
- 冬と海
- 種子と発芽
- 群集の中で
- 季節は
- 「生」
- 都市
- 恋
- Lucky Day
- ふたり
- 死よ
- Mよ
- 十一月の或る広場で
- ながい季節に
- 太陽よ
- お前の優しさを外から
- 百貨店の入口やターミナルに立っている女たちに
- 永遠
- 月
- 若い女に
- 微笑み
- 二人
- 春
- 或る少女に
- わたしが
- 言葉
- 詩人
- 反歌
- その時
- 生よ
- 誇り
- 言葉としての
- 二十二歳の誕生日のうた
- 母に
- 恋人に
- 詩人に
- 酉の誕生日
- 題なし
- 吟遊詩人
- Lament
後記