1958年7月、三十書房から刊行された佐々木たづ(1932~1998)の童話。装幀挿画は鈴木悦郎(1924~2013)。
佐々木たづさんの「白い帽子の丘」を読みました。学校を卒業してこれから大いに働きたいと思っている時失明された不幸な方がかいたものとは少しも思えない明るい希望に燃えた温かい童話ばかりなのに感心しました。作者の美しい、信仰に満ちた心と、ご両親の美しい愛情がこの作者の想像を明るい清らかなものにしているのだと思います。
そしてその想像の動きが自然で、簡単ではなく、筋の運びも常識的ではない処にこの作者の頭のよさと、素質のよさを語っています。そして筋のはこびが無理に考え出されたものでなく、おのずと心に浮んでくる事を素直に書いているので、すらすら楽しく読めるのもいいと思いました。僕に紹介して下さった野村胡堂さんも同じことを感じていられると思います。(「愛と美にあふれた童話/武者小路実篤」より)
これは近頃めずらしい童話です。ドイツやデンマークの山奥などへ行くと、このような話が今でも残っておるのではないか。そんな気がちょっとしました。どこか外国風で、そして民話風なのです。まだ若い女の方の作だそうですが、よく書けて居ります。アンデルセン以来の童話の電話を守り、それに原子バクダンなどの現代も、象徴風に出て来て、しかも少しも不調和な感じがありません。凡て、やさしく和かな童心の中にとけ合っているように思われました。このような作品は大抵その作為が目立つのですが、ここにはそれがありません。
(「新しいメルヘンの誕生/坪田譲治」より)
目次
- 少年と子だぬき
- もずにのった孝(こう)ちゃん
- きつつきとしゃぼん玉
- さえちゃんの「時の道」
- 金の糸とにじ
- ろうせきの道どこまでつづく
- 白い帽子の丘