2004年6月、七月堂から刊行されたキキダダマママキキ(岸田将幸)(1979~)の第1詩集。栞解説は小笠原鳥類(1977~)。
「生まれない」とは、どういうことか。それはここでは、母親にいつまでも甘やかに抱かれていたい、ということではないし、〈母国語〉(語彙及び文法)の内部にとどまって、それを破壊することなくいつまでも惰性に従って(〈正しい日本語〉で)書いていたい、ということでも、ない。生まれてしまうことは乾いた確固たる皮膚に包まれて定まった形の中に閉じ込められることであり、「生まれない」ことは不定形でゼリー状で、他のものとの輪郭が曖昧で、ひろがりがあり〈自由〉であることなのである。
というわけでこの詩集には、奔放でぐちゃぐちゃな状態を発生させるような詩が並ぶのである。まとまった筋道を読み取るよりも前に、そこで理不尽に驚くことが重要であるだろう。(「ゼリー状の言語について――「生まれないために」を読む/小笠原鳥類」より)
ここにある詩篇は、二〇〇一年から二〇〇四年の間に書きためたものを自選した結果です。仮に名づけるのなら、紛糾する空想から、空想する世界以前へ、という試み。がこれからもずっと続くと思うと楽しみですが、ナルシシズムへの不安があることも確かです。
わたし、はもう生まれたくなく、それは決して否定的なことでなく、むしろ極めて健康的なことであると考えます。死んだら宇宙という沸騰直前のゼリーに融解する。いまわたし、は辛うじて皮に守られていますが、もう悲劇はやめにしたく思います。(「あとがき」より)
目次
- 序(無方位な散骨が……)
- 風葬(飛ばされてゆく輪、輪、
- 三角錐の感傷
- 水辺の家を抜けて
- 穴に入っていったのではなかった……、/ふわふわな、花(あ)?
- 石を掌で触わる裸足で草を踏む
- あの、世渡し(わたし)
- 石がある
- 濁水(下 の泡)
- 森の奥
- 世界に生まれるまえに
- 空想紛糾。
- 殺される
- 擦過する夜
- 道の皺になっているところ
- 流木の流れ着くは朝
- ナイトスイミング
- 夜はミルクのうえを歩いて
- ゼリー、ゼリー、
あとがき
NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索