2011年5月、講談社文庫から刊行された伊藤比呂美(1955~)の長篇詩。カバー写真は新美敬子。デザインは菊地信義。第18回紫式部文学賞、第15回萩原朔太郎賞受賞作品。元版は2007年講談社。
目次
- 伊藤日本に帰り、絶体絶命に陥る事
- 母に連れられて、岩の坂から巣鴨に向かう事
- 渡海して、桃を投げつつよもつひら坂を越える事
- 投げつけた桃は腐り、伊藤は獣心を取り戻す事
- 人外の瘴気いよいよ強く、白昼地蔵に出遇う事
- 道行きして、病者ゆやゆよんと湯田温泉に詣でる事
- 舌切らず、雀は婆を追い遣る事
- 梅雨明けず、母は断末魔に四苦八苦する事
- ポータラカ西を向き、粛々と咲いて萎む事
- 鵜飼に往来の利益を聴きとる事
- 耳よ。おぬしは聴くべし。溲瓶のなかの音のさびしさを。の事
- 秋晴れに浦島の煙立ち昇る事
- 瘤とり終に鬼に遇い、雀の信女は群れ集う事
- 伊藤ふたたび絶体絶命、子ゆえの闇をひた走る事
- とげ抜きの信女絶望に駆られて夫を襲う事
- 良い死に方悪い死に方、詩人は死を凝視める事
- 伊藤病んで、鳥花に変じ、巨木はべつに何にも変わらぬ事
解説 上野千鶴子