1986年11月、沖積舎から刊行された小笠原賢二(1946~)の第2著作集。
私は、週刊読書人編集部に勤めながら、記者として多くの文学者たちへの探訪記を書き続けてきた。そのうちの相当量は、四年前に刊行した『黒衣の文学誌』に収めたが、本書はその後、引き続き同紙に断続連載してきたシリーズ「現代文学の〈創作工房〉」十八回分を柱にまとめたものである。私の二冊目の著作になる。
本書に登場しているのは二十一人だ。いずれも、作品の徹底性において共感できる文学者ばかりである。さまざまにレベルが異なりはしても、生き方やその作品空間の形成において、彼らはすべて「越境者」もしくは「異界」の住人とでもいうべき存在である。その点に、とりわけ私は魅かれたのである。むろん、文学は多かれ少なかれ既成の枠を破り出るのであり、そこに「異界」が現出するのも当然のことだろう。が、彼らにおいてのその度合いはかなり顕著であり、また異色だと私には見えたのである。
(「あとがき」より)
目次
I 作家たちの〈工房〉
- 椿實 文字でつくった「万華鏡」
- 森茉莉 「過去」という名の劇空間
- 大岡昇平 「記録」と「自己表現」の合体
- 古井由吉 「没我」的境域への接近
- 藤枝静男 「私小説」概念の破壊作業
- 深沢七郎 骨太の「人間肯定思想」
- 澁澤龍彦 「螺旋的運動」と「東洋的虚無」
- 小島信夫 「至福」としてのアナーキー
- 円地文子 「永生」への言葉の錬金法
- 倉橋由美子 「湿気」を追放する文学
- 大西巨人 迷宮化する「厳格主義」
Ⅱ 詩人たちの〈工房〉
Ⅳ 文学の現在を語る
跋清岡卓行
あとがき