1998年7月、書肆山田から刊行された八木幹夫(1947~)の第6詩集。挿画は築島謙有。
秋来ぬとめにはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
「古今集」一六九・藤原敏行ああ、秋がやってきたなと私の中のだれかが呟く。でもどこにもその正体は見えない。半世紀を生き、目に見えないものに突き動かされて詩を書き続けてきた身ではあるけれど、してきたことは一体なんであったろう。私の貧しい想像力はまだあの秋の、ものかなしい、けれども夏とは明らかに一線を画した爽やかな空気の気配をとらえることができていない。詩とは、いつもその一歩手前で招待を掴み損ねたるものの謂であるのか。(「あとがき」より)
目次
- 朝の始まり
- 野の花
- 南方の虫歯
- 家の外
- アッシリア文明の階段
- さまよえるチャイコフスキー
- 百年後
- ベレー帽の男と詩人
- お話の名人
- おおさむ こさむ
- もうひとつの旅
- 森の抄
- せり
- はるのもり
- なつのもり
- あきのもり
- ふゆのもり
- 伝説のやま
- まつり
- めにはさやかに
- あやめ
- 笑う海
- ははにふれる
- 草
- 遠い星
- 炎、やわらかな灰
あとがき