1971年4月、現代詩工房から刊行された榊弘子の第2詩集。装幀は立木斤一。
「折れる」という意識は、第一詩集を編んだ時、すでに「過去」へ向う貨車に積み込んだ筈であった。
その後、家庭という枠から外へ跳び出してPR誌の編集に携るようになって、やはりどうにもならない「女」というものにつきあたるのである。
「女」という字は、見れば見るほど、見事に折れていて、「男」という字のぎくしゃくした折れ方とはまるで違うのだ。
女の平均寿命というものの、ほぼ五分の三を生きて、私の人生の一つの折れ目と言える時期に死はあまりにも透明であり、韜晦な生のあかしをたたみ込む折れ目は矮小に過ぎない。
せめて女としての言葉を物狂おしく燃焼させてみたかった。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 書く
- 箭
- 雪の墓地
- 北方の眼
- 海嵓
- 雪女
Ⅱ
- 氾濫
- 不可視
- 薄暮
- 生きる
- 神よ
- 終りの時
Ⅲ
- ふりかえる
- 抉られる
- 塗られる
- 消す
- 手
- 遺留品
- 幻想曲
- 断崖
- 不在
あとがき