1986年6月、花神社から刊行された新川和江の詩集。装幀は熊谷博人。
目次
- 苦瓜を語るにも
- さういふ星が
- あのかたの沈黙の中に
- ことばとは通貨のやうな
- 傘をさして
- ぬきさしのならぬこころを
- 目の前の大銀杏を
- 川べりと書いて
- 語彙をゴナウと
- 鱧 といふ名前があるので
- お米を量る時は
- お雁書なつかしく
- 諸橋のお大尽のお蔵へ
- 日に一個づつ生んだつて
- ――アソビマショ
- それから地球も皺ばむほどの
- わたしはまだ一行も
- 渡りかけて こころはふいに
- きずだらけのこころは
- 沈黙してゐる人の
- 夜ふけに草をしめらせた露が
- 幼な子を風呂に入れようと
- せりせりとおまへの茎を
- 足の悪い子供が
- 落葉の季節がきて
- どれほどの扱きを受ければ
- 骨の隠し場所が
- バルコニーにひきわり麦を
後書に代へて
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