1984年11月、思潮社から刊行された征矢泰子(1934~1992)の第4詩集。第9回現代詩女流賞受賞作品。
はじめての詩集をまとめてから、もう八年がすぎました。当時、小学生だった娘は大学生になり、いっぱしの批評をする手きびしい 読者になってしまいました。
でも、こうしてふり返ってみると、わたしにとって、この八年は、ひどく短かかったような気がしてなりません。そしてそれは、多分、わたしがわたしに残された時間にこだわるあまり、ひたすら書き急ぎ、生き急ぎつづけてきたことのせいでしょう。時間は、逃がすまい、喪くすまいと追えば追うほど、より早くすぎさっていくものであることに、わたしは今やっと、気がついたところです。
今日からは、もっとゆっくり、そしてその分もっと深く、生きていこうと思います。時間を追わず、時間に囚われず、生きていくつ もりです。四冊目の詩集は、四つ目の曲がり角。ここからふたたび、新しいわたしの道は はじまらなければならないのですから……
(「おわりに」より)
目次
第一章 すこしゆっくりしずかに
- 種子喪失
- いちご
- ひとつぶの種子
- 朝顔
- 花のなか
- 桜
- 土
第二章 おもたげにかつやわらかく
- 目蓋
- ひょめき
- 乳房
- ゆび
- 足
- 咳
- 地獄
- 老年
第三章 かろやかになにげなく
- みみ
- 髪
- しっぽ
- 少女
- 半獣人
第四章 スタッカートではっきりと
- 決別
- 雪に
- マザー・テレサに
- 手
- 椅子
- 輪郭
第五章 だんだんとおそくつよく
- 万華鏡
- 宿命
- 傘
- 孤島の鬼
- わたしの赤
- 晴天
- 鏡
- 洗う
- 罪と罰
- ラブ・レター
- 黙殺への反逆
- 一寸先