1993年3月、小沢書店から刊行された渋沢孝輔のエッセイ集。裝画は柄澤齊。
久しぶりにエッセー集を編んでみてあらためて気付いたことは、近年の自分の書き物に故郷や植物に触れたものが多くなっていることである。いくらかは年のせいかもしれないものの、本人は、長らく忘れていた、根の研究をしているつもりであり、いずれにせよ内に動くものに釣られての勢いの赴くところ、やむをえない。それにしては、かっての文人たちのようにそこに堂々と根を張って、さびをきかせることもできかねているあたりが、困ったところである。
この集には相変わらず種々雑多な主題の文章が入っていて、中にはかなり昔のものもある。一方で、ランボーとの比較における宮沢賢治、ヴィクトール・セガレン、カトリーヌ・ポッジなどについては、本書に収めた文章のあとで多少は詳しく書いたものが別にあり、ほんとうは併せて読んでいただきたいところだったが、分量の加減で割愛せざるをえなかった。次の機会を待つことにしたい。(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
- 樹の昇華
- 花のはなし
- 裸の冬
- 梅開く
- 花後の想い
- 今年の秋
- 尾形光琳「燕子花図屏風」
- 植物がみえるとき
- 緑の繁りを前に
Ⅲ
Ⅳ
- 日本の象徴詩
- 白秋の転回点
- 田中恭吉の詩歌作品
- 三好達治『萩原朔太郎』
- 三好達治の位置
- 菱山修三のこと
- 命の流れ――釋迢空の一首
- 無明の浄化――斎藤史歌集『渉りかゆかむ』
- 「詩は感動」のことなど――草野心平さん
- 草野心平管見
- 詩への恩――小林秀雄氏追悼
- 夢の王族――瀧口修造
Ⅴ
- アルカディアの謎
- ボードレール『パリの憂鬱』
- 甦ったボードレール
- プチフィス『アルチュール・ランボー』を読む
- ランボー・運命の軌跡
- ランボーの遺産
- ランボー・没後100年
- Ramboの世に
- ランボー・無類の越境家
- ランボー・彷徨の一世紀
- 本歌取りあるいは変奏
- 空位の時代の詩人――菅野昭正『ステファヌ・マラルメ』
- 「知的な倍音」への悲願――ヴァレリー
- リルケへの機縁
- 薔薇の詩をめぐって――リルケ
- 埋もれていた詩人――ヴィクトール・セガレン
- カトリーヌ・ポッジのこと
- オクタビオ・パスの俳句論
あとがき