2009年1月、書肆山田から刊行された田中佐知(1944~2004)の遺稿集。
田中佐知という詩人は、もうこの世にいない。生前に出会う機会もなかった。けれどわたしは、彼女とどこかで、すれ違ったことがあるような気がしている。
遺されたたくさんの詩を読んでいるあいだ、行と行のあいだから、砂粒のような無機的な視線が、わたしを見ているような気がしていたせいだろうか。その眼は温かくも冷たくもない。親しくなれそうだが、わたしたちのあいだには、生死を分ける透明な境界があるので、容易には近づくことができない。けれどこの距離こそが磁力となって、わたしはこれらの詩に惹きつけられている。(附録栞「砂の眼/小池昌代」より)
目次
Ⅰ 詩篇
- 水母
- 四月
- 生
- 固い心
- 視る
- にわとり
- さりげない一日
- 電話
- 贈りもの
- 理想
- 無題(女…)
- 砂粒
- 名づけられないもの
- スバル
- 無題(砂の中…)
- バンコクの夕ぐれ
- チャオ・プラヤ河
- 風(風は ふるさと を…)
- 興南九
- 船乗り
- 手紙
- 砂(砂は/風…)
- 砂の系譜
- ビードロ
- 餓と少年
- ワインの夢
- 女のいのち彫り刻む太陽
- 海
- シクラメン
- 芍薬の花
- くちなしの花
- けいとうの花
- ケシの花
- 花と女
- ベトナム
- 逃げた言葉
- 砂時計の砂
- 植物と砂粒
- 宇宙の形象の中で
- 水化粧
- ワイン
- ガラスの洋館
- ダイヤモンド(透明なガラスの…)
- 生きる
- 砂(ふるえるすな。…)
- 砂丘
- 夕焼けの太陽
- 無題(洗練に洗練を…)
- 無題(都市を行き交う)
- 非凡
- 燃える砂
- 夏の日の驟雨
- 耳のふち
- いつも向かうのは白い紙
- 愛の行方
- かげり 翳り
- 夏の終り
- 秋の海
- 一瞬
- 二十歳の夏
- 薔薇
- 瞳
- 風(ね/風の言葉って…)
- レモンティとミルクティ
- 宇宙の横顔
- 信号
- 乾いた砂浜
- 砂のかなしみ
- 短いお話
- 二月の海
- ダイヤモンド(憧れがあっても…)
- いのちの砂
- 日常の神
- 海と空
- 白いカモメ
- 砂(飛ぶ砂。…)
- ティーカップ
- せみ
- チチコドクノタビ
- 砂(いのちの息吹きの…)
- 土
- 阿字が浦
- 晩秋
- 宝石
Ⅱ 散文作品
- 1 悟るということは
- 2 砂・幻想
- 砂・幻想
- 大地
- 阿修羅像
- 無題(出合いはいつも…)
- 運転免許
- マニキュア
- 新宿(旅から帰り…)
- 新宿(エネルギッシュで…)
- 上野公園
- 雑感
- 王貞治
- 日本語教師としての役割(意義)
- 願望 田中保子の一考察
- 詩や生き方に影響を受けた、父。
- 詩とは何か
追悼――田中志津
田中佐知略年譜