1991年10月、書肆山田から刊行された高橋順子の評論集。装幀は青山杳。
詩書を刊行していた出版社に十三年ほど勤務していた関係で、何人もの素晴らしい詩人たちにお目にかかることができ、詩集成立の現場に、わくわくしながら立ち会うことのできるという特権を、手中にしていました。いま思えば、これ以上望めないほどの詩の学校に私は通っていたのでした。中途退学生としては、差し出せるもののあまりの貧困さに、非力を嘆くほかありませんが、現代詩と自分との出会いを書きとめたつもりです。本書は、詩人たちが苛酷な条件下に置かれたときになって、やっと姿を見せたがるきらいのある詩女神に、いささかのうらみをこめて捧げるものです。
(「あとがき」より)
目次
☆
- 『白金の独楽』と『月に吠える』――北原白秋と萩原朔太郎
- 帽子の下の顔の考察――萩原朔太郎
- を暗き中に――米澤順子
- 素朴な琴――八木重吉
- 溶ける座標――高橋新吉
- 犬だってニンゲンだ――草野心平
- 鬼ごっこ――山本太郎
- 『ロルカ詩集』――長谷川四郎
- 十五歳の遺稿詩集――杉尾優衣
☆☆
- 井伏鱒二――『厄除け詩集』
- 小野十三郎――『最期の木』
- 石垣りん――『略歴』
- 茨木のり子――『人名詩集』
- 岸田衿子――『へんなかくれんぼ』
- 大岡信――『故郷の水へのメッセージ』
- 入沢康夫――『水辺逆旅歌』と『歌――耐へる夜の』
- 花田英三――『皇帝のいない国』『東京夢現百景』
- 財部鳥子――『腐蝕と凍結』から『枯草菌の男』まで
☆☆☆
- 詩の中の陥し穴
- らしくない詩
- 擬人法について
- おとなの擬人法
- 作者の中の読者
- わたしの四行詩
☆☆☆☆
- 女性の詩
- ひらがなの力
- サラダを盛り分ける
- 中年女性と詩作
- 困難な愛の詩
- 咲きかけの花の詩
あとがき