詩について 庄司直人詩集

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 1960年11月、文芸東北新社から刊行された庄司直人(1921~1999)の長篇詩集。

 

「詩とは何か」ということは、詩を書きはじめて以来二十年いつも内部から問いかけられていることである。生活感情がそのような設問にまつわられているならばしたがって「詩とは何か」という詩があらわれる。も当然なのだろう。
 がしかし「詩とは何か」ということが直接作品の外部にまであらわれるというのは、やはり問題があるのではないか。常識的にいえばこの設問に対しての答は造型された作品ではなくて詩論として論理的に把握された過程もしくは結論の筈なのである。文章になるにしろならないにしろ頭の中でそのように処理されるのが普通である。創作活動の中でのこのようないわば異常――つまり詩論になる筈のものが詩として造型されるのはなぜなのか、又それは何を意味するのだろうか。私の作品の歴史の中にそのような作品が点在するならば、その作品の成立した時は私の創作活動の中での一つの事件を意味するにちがいない。
 事実私の作品の中に『詩について』という題乃至はテーマの詩が間歌的にあらわれる。創作が正しく内的必然に立つかぎりこれは無視することは出来ない。これらの作品をひろいあつめ創作時期にしたがって並べてみるならば私自身の内的な歴史が相当に直接的なかたちで露呈してくるにちがいない。どこでどのように屈折し挫折し或いは生長し発展したのか自らかたるにちがいない。
 つまり(一)『詩について』という詩型の作品の成立するメカニズム、その作品系列がしめす精神史の様相の二点を明らかにしたいために、いゝかえれば私の創作過程そのものにある特殊性と、私の精神史をとうしてアプローチしようとする普遍的な人間の精神の発達の様相をあきらかにしたいために、自らのため何らかの役にたつものと考えてこの詩集『詩について』をまとめてみた。逆年順に編輯したがこれは専ら自分の便利のためであり、読者には迷惑なことかもしれない。お許しいたゞきたい。
(「あとがき」より)


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