漂う部屋 吉行淳之介

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 1955年11月、河出書房から刊行された吉行淳之介の第2著作集。表紙絵は宮本薫。

 

 この本は「驟雨」につづく私の第二創作集ということになる。昭和三十年度の仕事のおよそ半分の量にあたる六篇を選んで、ここに集めた。二十九年の十月に辛うじて清瀬病院から退院してきた私にとって、この一年間はかなり辛いものだったが、病気による疲労は作品の上には現れていないと密かに自負している。「黒い手袋」(三十年文学界一月号)の主人公を、重病かと疑われた症状があっけなく通り過ぎてしまう設定にしたことは、病気が私にとって何ほどの景響も与えなかったという気負った気持のあらわれでもあった。それが一年後の作品「漂う部屋」(同年文芸十一月号)になると、入院中の体験を再構成したものになっているので、その間の病気にたいしての気持の移り変りが自分では一寸と面白くおもえる。その他の作品の発表誌及び発表年月は、「水の畔り」(三十年新潮五月号)、「夏の休暇」(同年文学界六月号)、「軽い骨」(同年文芸七月号)、「暗い半分」(同年知性十一月号)である。
(「あとがき」より)


目次

  • 漂う部屋
  • 軽い骨
  • 夏の休暇
  • 暗い半分
  • 水の畔り
  • 黒い手袋

あとがき


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