1952年8月、輝文館から刊行された徳山璉(1903~1942)の随筆集。装幀は小出卓二。
徳山璉君を知ったのは、音楽歌手としてよりも、石黒敬七、高田保君らのやつてゐた風流倶楽部のユーモリストとしての方が、盛ろ多い位で、同君が戦時下に於ける明朗な存在であることも、充分認められるが、同君が一人のユーモアに富む文化人として、総ての場合に大きな役割を勤めてゐたことも否めない。同君が某隊で若い兵隊を相手に、軍歌の指導をしてゐるのを聞いたことがあつたが、その機智縦横の才能は、若し同君が今生きてゐたならば、音楽好きの南方占領地の宣撫文化工作に、どれほど役立つたか、同君が四十歳の若さで逝つたことを、心から惜しむものである。
昭和十七年四月
(「序/菊池寛」より)
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序 菊池寛