2010年9月、思潮社から刊行された木坂涼の第8詩集。装画は著者。
目次
- スーパーマーケットの前に
- 私は靴屋へ行った。
- 私は改札を出て傘をひろげた。
- 私はカメラを買った。
- 私は句会に出席した。
- 私は絵本を開いていた。
- 私はNHKの教育テレビに出た。
- 私は保育園に電話を入れた。
- 私は久しぶりにA氏に会った。
- 私は人通りの賑やかな春の……
- 買い出しの帰り道で、
- 私は生まれた。
- 姉と私は、扇風機の羽の中心に、
- 私は父といっしょに
- では決してない夏の日
- 私は雨に濡れながら歩いていた。
- 私は家を出た。
- 私は恋人と木登りをした。
- 私は六畳一間に二畳の台所が……
- 私は風呂無し六畳の、
- 「あさって夕方からカレーパーティ……
- 「池袋の駅へは……
- 「中仙道はどっちですか」
- ニューヨークのど真ん中で、
- 私は台湾で道を訊かれた。
- 私はインドのカルカッタにいた。
- 私はスペインのマドリードにいた。
- 私は台北市立動物園にいた。
- 私はメンフィス動物園にいた。
- 私はパリ動物園にいた。
- 私はシンガポール動物園にいた。
- 私は上野動物園にいた。
- 私はニューヨークの町を歩いていた。
- 私は日の暮れる頃になって髪を切りに……
- 裏通りにある小物屋さんに入った。
- アメリカ人の夫と食堂に入った。
- わが家のインターホンが鳴った。
- 「三千円以上お買い求めのお客様に、
- 棚の上のFAX機が受動受信を開始した。
- 私は猫を抱いてあけた窓から……
- 私は猫を風呂に入れた。
- マンション裏手の……
- 繁華街の奥の立体駐車場の入口に、
- 買い物に行く途中の道端に、
- 最寄り駅へ歩いていると、
- 活けてあった花の蕾が開いた。
- きれいに葉を落とし、
- 私は雪の結晶を見ていた。