2000年5月、翰林書房から刊行された玉井敬之(1929~)のエッセイ集。
『高畑之家』以後の文章を拾った。『高畑之家』には楽しみながら書いたものが多かったが、ここには苦痛を伴なったものもいくつか納められている。大半は同人誌「遅刻」、「楽市』に載せてもらった。「亡弟記」は弟が亡くなってから日を経ず綴って手もとに置いていたものである。この本ができたら喜んでくれただろう人々とは境を異にしてしまった。周囲に隙間ができてきた。そこから淋しい風が吹いてくる。
近頃、私のやってきたことは、つまるところ、ディレッタントの域をでなかったのではないかと思うようになった。いまここにいること、いまここでしていることに対して何時も小さな違和と不安とを抱いていた。それがどうしてなのかはよく分からない。しかし、一方で私は自分がディレッタントであると思うことに多少の愉快を感じているのも確かなのである。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
- 北京から
- 一九九四年 北京・春から夏へ
- 初夏の西安
- 延安行
- 北京雑記
Ⅲ
あとがき