遠い行列 上林猷夫詩集

f:id:bookface:20181209155352j:plain

 1970年10月、日本未来派発行所から刊行された上林猷夫の第4詩集。装幀は鶴岡政男。

 

 第三詩集「機械と女」を出してから、十四年経ってしまった。私にとって最も大事な時期なのだが、私は或る理由から、与えられた運命に忠実になろうと努めた。ひとりのビジネスマンとして、企業の内部に没入し、繁煩な日常性の中から、人間とは何かを、見つめようとした。そして、ひとつひとつ憑きものが落ちて、どうやらいわゆる定年に至る私のプログラムは終ろうとしている。
 振り返ってみると、病院をかかえた私にも、危機が幾たび通り過ぎただろうー。この間、気がついてみると、詩の出発を同じくした池田克己につづいて、小池亮夫、島崎曙海、宮崎譲の親しい仲間は死んでしまってもう何処にもいない。また、「僕は新聞記者、君は外交官」といって、一緒にフランスへ行こうと話し合った中学時代の友人森居敏三は、ほんとうに外交官になり、復員後ウルグァイ、ペルーの在外事務所の開設に当ったが、不幸なことに急死してしまった。森居が生きていたら大使級だろうに、みんな思えば思うほど、取り返しのつかない人生の空しさを覚える。
 戦死した日垣又信、鎌田理市、浜田乃木、渋江周堂の詩業についても、書き留めておかねばならないのに、未だに果せないでいる。
 この詩集「遠い行列」に収めたものは、昭和三十一年以降のもので、何れも衰弱の果ての所産であり、全く歯痒いものばかりだが、戦後いつも私に重くのしかかるものを見つづけてきたといえよう。
(「あとがき」より)


目次

  • 乾いた眼
  • 遠い行列 
  • 二つの眼 
  • 黒い眼鏡 
  • 二つの歌 
  •  朝の歌 
  •  道路の歌
  • 朝の駅
  • 寂寥の人 
  • 小さな噴水 
  • 会話
  • 波止場にて
  • 十月のキリギリス
  • 修学院離宮
  • 季節
  • 白い針
  • 北の国
  • 見えない祭壇 
  • 現代の埴輪
  • 街のサーカス
  • 小さな灯
  • 七月のシャンソン
  • 街の中で
  • 港が見える丘
  • 五つの夢一つの言葉
  • 朝の鏡
  • ある記憶

あとがき


NDLで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索