1991年8月、深夜叢書社から刊行された峰岸了子(1944~2018)の第3詩集。
ゆっくりゆっくり詩を書き続けてきた。時どき、こんな遅いペースでき続けてきた。時どき、こんな遅いペースでよいのかと自問するが、生来気分屋の私には、自分のリズムでしか、納得いくまでの作業を、押し進めることができない。詩種が発酵するのに、人一倍の時間を必要とするようだ。
というわけで「三月の溺死」を発刊するまでに、五年以上の年月がかかった。「幻視者」に発表した作品に加筆したものを中心とした。あいもかわらず、私詩の域から抜け出せずにいる。深層部を旅する個の発見は、詩を書くうえでの大事な要素だが、最近の関心事のひとつは、広がり。個を含めた多くの友人、知人との共通の話題や、意識の流れを、活字にできないだろうかという思いがつのっていた。
その結果できあがったのが、Ⅲ<背景>。普段何げなく話しているあれやこれやを、作品にするには裏付けが必要と、資料集めに歩きまわった。着眼点まではよかったが、のんびり構えているうちに世の中の変化は早く、ニュース性はうすれていくばかり。おまけにできあがったものが鼻つまみ、上滑りなものだったらどうしようと、心配の材料は増えていく。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ<遠景>
- 遠い記憶
- 溺死
- 春の雨
- 来訪者
- 匂い
- Mさん
Ⅱ<近景>
- 犬
- 数字挫折の日日に
- IF
- 海
- 二二時
- 宣誓
- 夏の朝
- 魚になろう
- 私の詩
Ⅲ<背景>
- 私信
- 陽気な出稼人
- 数字
- 症候群
あとがき