1998年1月、書肆といから刊行された久納不二子の第1詩集。装幀は高島平。
書き始めた頃、なぜ?と訊かれ、「気がついたら書いてた」と言うと、その友
だちはおかしそうに笑った。
詩誌ラ・メールという大きな海に育くまれました。新川和江先生、恩人吉原幸子氏に見守られつつ、おぼつかない足取り(手取り)でラ・メールの浜べを歩きながら、砂に遊び、(時にはコブ付きで)貝殻を拾い、海草をひろいました。
この海がなければ、詩集という一冊の本に文字を刻みたいと念うことはなかったと思います。そして、書くことで、少なくともおかしくならずにすんだようです。
何かを書く時、ただ言葉が在った。
時折り、ことばは日常とは全く驚くほど違う姿をしているように思え、それがとても不思議でした。
ことばのむこう側には、はるかな年月が流れ、風が吹いていました。
どこからか吹いて来る風。
そこに流れる或るひとつの「風雅」のようなものに惹かれたようです。(それが何なのか今もよくわからないのですが)、ポエジィ、或るいは風流のようなもの、これを一本の樹とすれば、チョコンと枝に止めてもらって、しばし鳴かせてもらった、そんな気がします。下手でもいい、鳴きたかったから〉というわがままを聞いて下さった、書肆といの高橋順子様、装丁の高島平様、本当にありがとうございました。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ浜べの手ならい
- 海流
- 地球では
- ひと夏ごとに
- 月Ⅰ
- 月Ⅱ
- 無題
- 無題
- ことば
- 街かどに湧いた海
Ⅱ時の川畔(ほとり)
- 風の音階
- 風の千年Ⅰ
- 風の千年Ⅱ
- 風の鎖
- 風の腕
- 滝
- 水の背骨
Ⅲ水の鎖
- 山峡
- 氷のりんかく
- 四月の花
- 冬の祀
- ひととき
- 水の響
- 淵
- 泥の醜女
- 立春
- 命日
- 水紋
あとがき