1978年10月、青磁社から刊行された高木秋尾(1947~)の第3詩集。表紙は沖空桂太。
上京して六年たった。使い慣れた手拭いを都会風のハンカチに変えてから、あまり自前を使うことがなくなった。どこへ立寄ってもオシボリ、ペーパータオルの類が常備されている東京ではその必要があまりない。その結果、ハンカチも見た目は汚れていないので洗濯が間遠くなる。考えて見れば不潔な話で、それだけ精神や感覚が弛緩しはじめているということなのかも知れない。そんな恐れを抱きながら此の詩集を編んだ。
此の詩集「やもり踏む」は、第一詩集「けもの水」以後三年近くの間に書いた四十篇前後のなかから編んだ。方法的にも「けもの水」が前編とすれば後編の性格が強く、一応の締くくりのつもりでもある。詩集に組みこまれなかった詩篇の中にも愛着深い作品が幾つかあったのだが、拾遺集でも出す機会があったら拾い出してみたいと思っている。
(「あとがき」より)
目次
闇誕生
- 俯角の雪路地
- ハングリー港
- 細路地夜話
聖寒帯都市
- 明日も雪だろうか
- 降りつむ耳
- 垂直な吃水線
斥候少年と女先生
- やもり踏む
- 浴衣が暑い
- 仮設プールの蛇
- ナナハンの女先生はろくろっ首
- 斥候少年の上京
女の訛伝
- 女の訛伝
- 少年入火
- 鬼火
- 見えない遠景
- 梅雨どき
あとがき