1994年2月、紙鳶社から刊行された新延拳の第2詩集。付録栞は真下章「新延拳さんについて」。
現代詩の多様性を楽しんでいる。詩人の数ほど詩型があり、内容・志向するところも千差万別。ただし、そのさまざまな系譜、歴史を丹念に継いている時間は、当面はない。
今はとにかく、思うがままに書いていこうと考えている。書きたいことが、不定期な霞のような状態で現れる。徐々に、出口を求めて圧力を増す。その段階でイメージを追求していく。どんどん連額的にイメージを拡げていくことにより、思考に形が与えられる。このような作業を続けていきたい。そして、書いていく事によって発見する自分に驚き、かつそれを楽しんでいきたいと願っている。
群馬に転勤してきて、二年七ヵ月程経過した。収録の時はすべて当該期間中のものであり、かつ私の第一詩集である。四十歳をむかえたこと、および当地に生活した記録として上梓を決意した。なお、この機会にこれまで使用していた野辺挙の筆名を、姓の部分だけ本姓に戻すこととした。
この間、母の交通事故に遭遇し、絶望的な日々も過ごしたが、詩を書くことにより、幾分か慰められたような気もする。
(「あとがき」より)
目次
- 島
- 砂時計
- 七五三
- 空蝉
- ほこり
- 眼
- 父の日
- 昭和
- 紙飛行機
- 母
- 還る
- 新生児
- エキストラ
- 鏡
- 被観察体
- 偉大なるトルソー
- 去年今年
- サザエさん
- 花粉症
- 時の無限循環
- ゆく春
- 向日葵。
- 草擦る音
- 廃坑
- 啓蟄
- 再啓
- 曝書
- 夢の彷徨
- 薔薇
- 斧一つ
- 尾てい骨
あとがき