1980年7月、思潮社から刊行された岡田隆彦の第10詩集。題簽は安東次男、装画は若林奮。
しばらく思うように詩作できなかったのだが、(仕上がりはとにかく)七八年の後半から、いくらか気分が乗ってきた。それらをまとめたのがこの一本である。わたしなりの羇旅歌と献呈詩をのぞくと、水を主題としたものが多い。いまは、La Citta del Acquaで、多種類のアアクワ・ミネラレ・ナチュラーレを飲み較べながら、少しずつ露出してきた女の肌などを眺めやっている。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- ぬめった時間
- 雨水の馳走
- アナナスの罪づくり
- 塩水木(マングローブ)の叢生する海辺
- インドの優しき知識人
- なぜ汚ないのか
- ヤッホにかかる月
- 羅馬の水
- 水でできた迷路
Ⅱ
- 未開発な湿地帯
- シェスタ
- Mの痩せる影
- 誰かの絵葉書
- 顔のない日々
- 顔に昏れなずむ頃
- 小鹿をうる
- 歯科医院での日録
- 樹に詫びる
- アダムの夢
- 空と野のあわい
- 底なしの瞳で泳ぐ
- 自分の影が
- 素敵な映像暮らし、今日
- 汗みどろ
- 堅固なものをつくりたい
- 眼が洗われる
- 夢を耕すには
- 橄欖の樹陰に漾う
- acqua (水)
- 流れゆく
- すでに何かを視た
- 版図を描き出さないのか、おい。
- 季節を身に纏う
- 澪標を印したい
- 水を求めし
- 海の洞穴
- 匈族の優しき沈黙
- 黄昏に和して飲む
あとがき