2008年12月、まろうど社から刊行された滝悦子(1955~)の第1詩集。装幀は高橋善丸。付録栞は貞久秀紀「円の彼方へ」。
詩が書けなかった数年前、回文に出合った。遊び心。厳しい制約。それでいて行って戻ると世界は大きく変容している。ああ、なるほどと、いきなり映画のタイトルを使って挑戦したが、とんでもない。回文崩れがやっと。しかしあきらめきれずに広告や看板、見出しなど目についた文字を片っ端からひっくり返しては、意味をもたない文字列をながめ、セリフもなければストーリーなど説明しようのない映画ばかり観ているうち、詩が還ってきた。
再び詩に向き合ってからも、書いてみるまでなにが出てくるのかわからないし、出てきたものは相変わらず旅になり夢仕立てになってぐるぐる回っている。
それでも、いちばん初めの、「詩って意外にすてきだな」その単純な感激を大事にしようと思いながら、書きたいように書いている。
ここには二〇〇三年から二〇〇八年の作品と、それ以前に書いた八編を織り込んで私の第一詩集とした。いま、詩があることが嬉しい。これからもありますように。薔薇の実、実らば。ばらのみ、みのらば。薔薇の耳のラバ。
(「あとがき」より)
目次
- 行方
- レム記
- 密猟
- 二十二番目の橋
- 「部屋」
- TRIPⅠ
- 薔薇の実
- 土手
- やさしい嘘
- 「共有」
- 途中で
- 羊歯
- 遠く近く
- R(ルート)171
- 春の采配
- 雨期
- ドアの前に立ちながら
- TRIPⅣ
- 盗む
- 932番地
- 途中で2
- 「ヤクセンボーレ!」
- 鳥
あとがき