島の冬 本間容子詩集

f:id:bookface:20190708211640j:plain

 1994年8月、詩学社から刊行された本間容子の第2詩集。装画は本間要一郎。

 

 冬のことである。わたしが六歳で、弟は四歳だった。でも、わたしはまだ小学校へ上っていない。
 ある日、村に住んでいる祖父が、用事があって、町へ出て来た。おそい「ひる飯」をうちですませ、夕方村へ帰る。祖父は、わたしと弟を連れて、村へ帰ることになり、三人はバスに乗った。
 坂の上でバスを下り、三人は、雪道を歩き始めた。歩きなれない雪道を、歩きなれない子どもを連れて、祖父は、はげましはげまし歩いたのだろう。
 県道から村の道に入ると、見渡す限り、田んぼは、雪の原であった。
 わたしと弟は、その白い世界を、どうやって歩いたのだろう。それは、生まれて初めて見る、美しい世界であった。
 そして、祖父は、その翌年の夏に、亡くなっている。その時、わたしは七歳で、小学校二年生だった。
(「あとがき」より)

 

目次

  • 縁側
  • 存在
  • 冬のあけがた
  • 遠さ
  • 帰り道
  • 巡礼のような人の列に加わって
  • チョコレート
  • そんな花を見たかった
  • 石けり
  • 夜の町
  • 国境を越えて 見知らぬ国へ
  • 雪あかり
  • トタン屋根の家
  • いまにも踊り出しそうに
  • 黒牛
  • 白い猿がやって来た朝
  • ソファーのあたりがとても明るい
  • ビスケットの缶
  • ゆで卵
  • 西洋料理店で
  • 竹やぶの中の椿の木
  • 祖母の家の外井戸で
  • 竹やぶに灯がともった
  • 火が燃え鍋の中の物が煮える
  • 障子の戸
  • 千代紙をちぎってはっていると
  • 嵐の夜
  • 同窓会名簿
  • 手紙
  • 甘納豆
  • 遠泳

あとがき


日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索