1981年5月、詩学社から刊行された斉藤怘の第5詩集。装幀は齋藤求。
掛け算の九九をそらんじながら、友達と道草をくっていた学校の帰り道、雨あがりの凛(にわたずみ)に、白い入道雲が浮かんでいた。
「あそび」とは私にとって一体何であったのだろう。意味のない人生を生きて来て、子供の頃のそれらの数限りない無償の行為の影たちが、珠玉となって今私の心に宿っている。
それは乾ききった人間の心に、ふと永遠が落としていったいつくしみの涙であろうか。その涙に写る少年の顔たちを、私はかけがえのない私のいのちだと思っている。
私はソウル生れだから、日本の子らが知らない遊びを知っている。「ちぇぎ」「のるていぎ」「ちゃあちぎ」などがそれである。これらの遊びを解説しても、今では何の意味も持たないだろう。なぜなら、これらを含めた全ての遊びが私を育て、その私が「詩」のなかに生きていると思うからである。
二十一編の作品は、一九七七年一月から一九八○年五月の間に書いたもので、「影ふみ」が最初の作である。これは詩集「石墨草筆」にも入っているが、「あそび」をまとめるうえで、なくてはならない作品なので、敢て再録した。
(「あとがき」より)
目次
- 遠い日
- 着せかえ人形
- 一本道
- てるてる坊主
- 釘さし
- おはじき
- 影ふみ
- 人買い
- ぶらんこ
- 石拾い
- 鬼
- 少年
- めんこ
- 独楽
- 落し穴
- 影絵
- 双六
- 折紙
- ちぇぎ
- のるていぎ
- ちゃあちぎ
あとがき