雪国のいもうと 戸田正敏詩集

f:id:bookface:20190718141120j:plainf:id:bookface:20190718141122j:plain

 1973年2月、八海文庫から刊行された戸田正敏(1915~)の第2詩集。装画は菊岡久利、題字は緒方昇。

 

 詩の中で、私はいつからか一匹の蝦蟇(がま)になろうと思っていた。たしか、密かにさぐり始めた魚沼の地に、出てくる獲物といったら、なにも黴くさく辛抱づよい涙ばかりか、さわさわと香りもよく、さながらよくできた干柿 漬物 濁酒のような正直や滑稽や優しい思いやり等がたくさんあって、一匹の蝦蟇にはすぎたる土壌であることが判ったからだ。そのうえ魚沼盆地は、雪にうもれて半年近くも冬眠ができるから、暢気者にとって格好な郷土であったのかも知れない。
 しかし、そう言っても集録した四十三篇は、けっして欺くことを知らない大自然にとって、ささやかな一握りの落葉の堆積にすぎない。やがてそれは土にかえり、美しく分離瓦解される運命が待っている。空しいことである。けれど、この空しさの故に私の生きる悦びの世界もあったようだ。
 おもえば四十年をこえて、たどたどしく貧しい詩をかき続けてきた。ずいぶんと疲れている筈なのに、私にはまだ書かなければならないものがいっぱいある。自然は今年も雪をもってきた。私はいま寒波の中にいて、それが却って内と外からの心ある熱風のように感じられる。
(「あとがき」より)

 

目次

Ⅰ雪国のいもうと

  • 夕日お娘
  • 狐さん
  • 昆虫経
  • 柿の実
  • 菜根譚
  • 四十雀
  • 万金丹
  • 鬼ヶ島
  • カブト虫
  • 過去帳
  • 藁布団
  • 出稼ぎ村
  • 雪国のいもうと
  • 村の地蔵さん
  • 蟻の死
  • 青い吹雪

Ⅱ青大将

  • おけらの唄
  • 強情
  • 雀の宿
  • 秋野
  • 戯画(一)
  • 手相
  • 青大将
  • 梅雨どき
  • 泥人形
  • 案山子
  • 虫干し
  • 機織り嫁こ
  • なめくじ
  • 水盗人
  • 野のほとけ

Ⅲ春の下駄

  • おやばか
  • 雪樋
  • 戯画(二)
  • 残庵通夜
  • ナマクラの詩
  • 船頭さん
  • 白河の関
  • 急停車
  • 雑草の女
  • 春の下駄
  • 数え唄
  • 牛の眼
  • 青い林檎

愛と哀しみの風土 中島登
あとがき

 

日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索