2013年5月、砂子屋書房から刊行された栗木京子(1954~)の第8歌集。組版ははあどわあく。装幀は倉本修。塔21世紀叢書、第230篇。第25回斎藤茂吉短歌文学賞、第12回前川佐美雄賞受賞、紫綬褒章受章作品。
本集は『しらまゆみ』に続く私の八番目の歌集です。二〇〇九年秋から二〇一三年初春までの三年半の作品四七〇首を収めました。
歌集名は『水仙の章』としました。水仙は以前からとても好きな花です。寒風に向かって咲く日本水仙の清らかさ、ラッパ水仙や八重咲き水仙の美しさ。華やぎのなかにひっそりと可憐な心を秘めた乙女のようで、強く心を惹かれます。
二〇一一年三月十一日、東日本大震災に襲われたときも水仙の咲く季節でした。嘆きと悲しみにつつまれた被災地に、小さなともしびとなって水仙は咲いていました。波にさらわれた家の跡地に置かれた水仙、避難所のそばに揺れていた水仙、そして棺の上に添えられていた水仙。まるで祈りそのもののような水仙の花を目にして、水仙は私にとって忘れ花になりました。
(「あとがき」より)
目次
- 言問橋
- 音の袋
- 火の輪
- 空飛ぶ足
- 梅林の向かう
- 英雄の名
- エーテル
- ラッキョウの花
- 母の冷蔵庫
- 東日本大震災
- 水仙添へて
- 漁船動かず
- われも一束
- 山小屋のドクター
- 花の座月の座
- 花粉図鑑
- 百年前の雨
- サンタンカ
- うつくしき水
- カレンダー
- ジャムの詩集
- ガリレオ温度計
- 八重楼
- 火遁水遁
- やはらかな電池
- 卓上手品
- 歌になることば
- 右と左の箱
- 冬空映る
- こゑを知りたし
- 黄の色ともる
あとがき
書評等
栗木京子『水仙の章』(砂子屋書房)を読む(桑原憂太郎雑記録)