現代人の建設 知的協力国際協会 ヴァレリイ他 佐藤正彰訳

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 1937年6月、創元社から刊行された談話集。翻訳は佐藤正彰。装幀は青山二郎

「國際聯盟文學藝術委員會」は「知的協力國際協會」に對し、現代人の形成に關して生ずる諸問題に就いて連續談話會を準備すべきことを要請した。
「委員會」は、かくも廣汎にしてかかる重要性を有する題目は、唯一回の會合に於いて著手解決せらるるを得ず、最初に先づ、第一回の討論に於いてその主要なる諸相を抽出するが適當であると思惟した。又事、人間の將來に對する本質的諸問題に宛てられたるこれ等の定期的會談に於いては、限定されたる題目を取扱ひ、漸次系統的研究を誘導し、かくして提起せられたる諸問題に全體的回答を齎すが可であらうといふ意見が、既に表明せられてもゐたのである。
 最も緊急なる任務は、蓋し、技術の日母の進歩によつて深奧より變じた世界に於ける現代人の観念を定義し、以てその形成の様々なる要素、新しき生活條件によつて及ぼされる影響、指示し得らるべき將來の大綱を闡明するに在る。
 續いては、人間個性を十分に伸張し、個人に一般的進歩に基づく諸獲得の福利を保證することを許容しつつ、同時にその個人的寄與に最大の價値を賦與することを得るが如き教育原理を決定することが、適宜であらう。かくして、常に一層改善せらるる教育手段、絶えず擴大せらるる可能性と、獲られたる結果の中に在り得る未だ不備なるもの不完全なるものとの間の、屡々著しき對比の理由を研究し、且つは人智の全體が日々増大する現代に於いて、過度の專門化と相互的不理解との危險は、如何にして避け得らるべきか、又如何にして時に應じて一般文化の擁護を保證し得べきかを稽へるに到るであらう。
 この結果、「現代人の形成」に關する「談話會」は、一九三五年四月一日より三日まで、ニイスに於いて、同じき機會に、ポオル ヴァレリイ氏を理事とする地中海大學の落成式を行つた市當局の招請に基づいて、開催せられた。フランクフルト、マドリィド、パリ、ヴェニスの談話會に續く該談話會には、左の人士が招じられた。

オーストリア―― 
 ジョセフ ストルジゴフスキー ウィン大學藝術史教授。
べルギー―― 
 ジュウル デストレ 元學藝大臣、ベルギー王立翰林院及びフランス言語文學ベルギー翰林院會員。
ボリヴィア――
 コスタ デュ レルス 文學者、全權公使。
スペイン―― 
 サルヴァドオル ド マダリアガ 元文部大臣、元オックスフォード大學スペイン文學教授、文學者。
フランス―― 
 アンリ ド ジッヴネル 上院議員、元大臣、フランス大使。
 リュシアン レヴィ・ブリュル ソンルボンヌ名譽教授、學士院會員。
 ジュウル ロマン 文學者
 ポオル ヴァレリイ フランス翰林院會員。
ブリテン――
 アルフレッド ツィムマーン オックスフォード大學國際關係教授。
イタリア―― 
 フランチェス ココッポラ イタリア王立翰林院會員、政論家、社會學者、ローマジャーナリズム學校教授。
 フランチェスコ オレスタ イタリア王立翰林院會員、文學者、リンチェイ翰林院通信會員。
ルウマニア―― 
 ジョルジュオ ブレスコ ブカレスト大學藝術史教授。
 エレエヌ ヴアカレスコ 女流文學者、ルウマニア翰林院會員。
スウェーデン――
 KRG ストロムベリー 文學者。
スイス――
 ゴンザァグ ド レエノオ 文學者、フリブゥル大學教授。
チェコスロヴァキア――
 カレルチャベック 小説家、戯曲家、政論家。

 ヴァカスレコ女史、チャペック、フォシオン、トーマス マン、ストルジゴフスキーの諸氏より親しく書信を寄せられた。その摘要はジュゥル ロマン、ド マダリアガの兩氏により談話會の序論として紹介せられた。式辞は巻末に採録した。
 本談話會に華々しく參加せられて後數週にして逝去せられたるアンリ ド ジュヴネル氏及びジュウル デストレ氏の靈に、深甚なる哀悼の意を表す。

 

目次

  • 一、問題
  • 二、現代の不安
  • 三、選ばれたる者の文化と全體の文化
  • 四、新しきヒューマニズムと神話
  • 五、結論
  • 六、式辭

索引


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