1976年12月、私家版として刊行された松井大造(三井為友)の詩集。
北ボルネオの捕虜収容所の中でつれづれに書きとめておいた十数篇の詩は、のう底にしのばせて持ちかえり、そのままのうていにしのばせて今日に至った。復員の当時、私自身故国の空気になじめないものが多く、従って此の詩も敗戦の故国にそぐわないものと思っていた。
三十年を経過して今読みかえしてみると、既にいまの日本人には忘れられたこと、わからなくなった思念も多く、これを活字にして幾人かの知友の胸にとどめてもらいたい欲望に駆られた。幸い私の昔の東京都立大学での教え子である上條喜靖君の、是非私の詩集を本にさせて欲しいという強い要請もあり、彼の技巧に私の三十年前の詩はマッチするところがあるかもしれないと、これお願いしてみることにした。詩家は私の小学生時代からの執心であり、今日まであちこちへの寄稿も多いが、まとまった詩集はこれが最初のものである。あえて松井大造第一詩集とせず、南海虜囚の詩と名づけたのは、極めて特異な、限られた条件の中でうたわれたものだからである。本名は三井為友。
(「あとがき」より)
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あとがき
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