ここ五、六年間のエッセイの中から、主に「ことば」や文芸作品に関連したものを集めた。自分ではマジメに書いたつもりでも、何ぶんにも守備範囲が狭く、あっちへょろよろ、こっちへよろよろ、脱線したり身の上話が割り込んだりしていてとても論、とは呼べない。そんなことから名づけたタイトルで、べつに私が酔っぱらいだという告白ではないのだが……(!)
文中に時折登場する老母は、この春永眠した。そのためこの本の校正が遅れたりもしたし、直接母に触れてはいないが彼女の枕許で執筆した文章もかなり混っている。次にまとめる予定でいるもう一冊のエッセイ集――生活篇―ともども、これらは私にとってひそかに、ある特別な時期の記念ともいえるのである。
(「note」より)
目次
1 海をわたる
- 〈絶筆>公告
- 日本訛りのイルカ語で
- グレイのヘアーネット
- 朝日と夕日
- やさしい女闘士
- 三人の老婦人
- ポーチの南瓜提灯(パンプキン)
- シンプル・イングリッシュ
- イランから来た男――MyChinaDollの作者について
2 ことば
- トラがタバコを吸ったころ
- ユーモアと情緒
- ギギギの角
- ものも言いようで……
- 匍っても黒豆
- 満天星
- 男のタマゴ
- 四十過ぎれば……?
3 書く
- 処女詩集――『幼年連騰』と『夏の墓』
- 「象」について
- なみだ雨
- 白さと水と
- 詩「共犯」における動機
- <私>への伝達
- "伏せ字"の詩
- "時間"の墓
- 私の訳した本――『恋文』
4 読む
- 『みだれ髪』に触れて――与謝野晶子
- 殺人事件――萩原朔太郎
- 一見の稚拙?―中原中也
- 空の穴・飛行船――宮沢賢治
- 『グスコーブドリ』の魅力――宮沢賢治
- 魂の素面――『定本黒田三郎詩集』
- "体験"からの独立―『石原吉郎詩集』
- おれよりも泣きたいやつ―石原吉郎
- 夕焼けをみてください――永瀬清子
- 三井葉子あるいは"浮舟"への手紙
- 狂気との闘い――シルヴィア・プラス
- 一冊の本――ケッセル『昼顔』
5 みるきく
- 異次元への窓口
- いくつかの出会い
- 目と耳のルーツ――私のKABUKI/シャンソンの中毒患者/海とシナトラ
- 朝のリンゴ
- むかしの映画―街の灯/美女と野獣
- "告白"の勇気――テス
- 二つの展覧会――ボナール/リベーラ
- ヒロインたち――オンディーヌ/オフィーリア/サロメ/アンチゴーヌ/マノン/つう/イェルマ
NOTE