1978年8月、花神社から刊行された塔和子の第5詩集。装画は新井豊美。
闇と光と闇と、いま在るということは、産れない前の闇と、存在を頭にしている光の時間、そして、やがて死滅し帰るであろう、闇の間に置かれている、しばらくの光の中にいる、また在らされていることの不思議さ、生きていることはなぜ光の中の時間なのだろう、という初発の問いの中を模索しながら、おりおりに書きましたもので、この答えのない問いは、かつて「療養文芸」で、いまは亡き村野四郎先生に出会い、ご指導とはげましを受けながら詩作していた頃からの私の課題のひとつで、今もまだ模索のうちに書きつづけているものです。
この詩集におさめました作品は、一九七六年に発行しました私の第四詩集『第一日の孤独』以後の作品で、永瀬清子先生主宰の「黄薔薇」、三木昇氏発行の「樫」、扶川茂氏発行の「戯」、麻生和子氏発行の「木馬」その他に発表しました作品に未発表作品を加えたものです。
なお本集は、ご多忙な大岡信先生のお手をわずらわしてご紹介をいただいた、花神社の大久保憲一様のご厚意により出版していただくことになりました。
(「後記」より)
目次
- 光芒
- 在る
- 暮色の中で
- 暗鬼
- 疑問の砂
- 杭
- 玩具
- 迎える
- 魅惑
- 今はまだ
- それ
- 嘔吐
- 魚
- 指揮者
- 立つ
- 始原の地
- 虚実
- 思わずあつく
- 漁る
- 見なかったものは
- チューリップ
- 四月
- めざめた薔薇
- 聖なるものは木
- 微笑
- カメラマン
- 通訳
- 鬼心
- 不明の城
- 憧憬
- ゆりかご
- あしたの木で
- 母胎
- 相克
- 青い炎のように
- 食べる
- ゆらぎ
- あの明確なもの
- 硬直
- 深秋
- 造花
- 甘露
- 明るみ
- 錨
- 幕
後記