1969年2月、冬至書房から刊行された堀内統義の第2詩集。題字は鴻池楽斎、扉絵は柴田良。
数年前の明るい秋の一日、瀬戸内海に面した郷里で、初めてマルク・シャガールというスラブ人の絵画に触れることがなかったら。おそらく私は魂の呪縛を、詩に奔らせることはなかったに違いない。祈りにも似た、シャガールの、清冽な魂に酔った、白い秋の陽差しの、あの短い時間の戦慄以外、私の精神に鎮座する、すべてのものは、あの日、枯渇してしまったのだ。ただ、その清冽な祈りを透した、激しい人間への愛は、静かに墜ちてくる星の光たちの冷さのように、私の破産した精神にも降り注いでいる。
私が詩を書くのは、描きたいという、心の底からのどよめくような熱情からである。しかし、それが何故、こうして私を突き上げてくるのか、私は知らない。それを知る時、それは私の肉体の奥深く沈みきり、凍えきるのであろうということが、己が詩について私が知ることを許されたすべてなのである。
その日まで、唯一、生きることに私を大胆にさせるのは、魂の呪縛とその祝祭なのである。魂の呪文は、私にとって、しばしば詩であるから。そして呪文であることにより、現代において詩の復権があり得ると考えている。
(「あとがき」より)
目次
第一章 意志の図案
- ぼくの詩と哲学
- その男
- お芝居の季節Ⅰ
- お芝居の季節Ⅱ
- 視線
- 177才のカルテ
- 明色な絵
- 美食者の詩
- 破調
- セレナーデ
- セブンティーンのための四季のエチュード
- 姉
- 姉
- 姉
- 祖父に
- 顔のない十八才の自画像
- その男のお話し
- 一九六六年七月の歌
- モンスーンの空の下
- あなたには見えないか
- 海
第二章 白日夢詩
- 思春夢
- 聖歌
- 白日夢詩
- 白日夢詩
- 白日夢詩
第三章 平和風平和
- 平和風平和前夜
- 平和風平和1
- 平和風平和2
- 平和風平和3
- 平和風平和4
- 平和風平和5
- 腹ばいした話し
- マッチ売りの少女の話し
- 回復希望船
第四章 祝祭星座
別章 抄 恋唄
- 恋
- 五つの恋唄
- あなたに
- あなたに
- あなたに
あとがき