1981年6月、思潮社から刊行された瀬尾育生による鮎川信夫論。
ここにおさめられた文章のほとんどは、同人詩誌『夜行列車』の第六号から第十一号までにわたって連載されたものを原型としており、書かれた時期は第三章『囲繞地』がもっとも早く一九七六年夏、以下『黄金時代』『献辞』『遺言執行人』『亡姉』『死者もまた無垢ではありえない』とつづいて、もっともあたらしい序章『「繋船ホテルの朝の歌」覚書』が書かれた一九七九年夏にいたるまでほぼ三年ほどの時間が経過しています。これは著者にとってまとまった詩人論としてははじめての試みであり、この三年はいわばひとつの端緒をめぐってのさまよいの時期でもあって、そのためここには文体の上からも論旨の上からもおおくの不整合が含まれているのですが、いまとなってはその時間をとりもどすすべはすでに断たれていると感じられます。あとはただこれらの言葉をとどかせたいとねがってきたいく人かの既知の、あるいは未知の人々にこの書物がとどけられることを祈っています。
(「付記」より)
目次
- 序章 『繋船ホテルの朝の歌』覚書
- 第二章 黄金時代
- 第三章 囲繞地
- 第四章 献辞
- 第五章 遺言執行人
- 第六章 亡姉
- 終章 死者もまた無垢ではありえない
付記