1966年12月、東洋美術出版部から刊行された平井亮一の第1詩集。平井は美術評論家。
たとえば詩や絵は、私にとって”出逢い”のようなものだ。
光彩陸離たる現実に昂揚し、あるいは混沌たる現実に低迷するとき、それまでまったく未知であった何ものかを予見しかつ予知することなしには、そこから離脱することはできない。このいわば不定形のものを、感覚的にであれ、また意志的にであれ、いちはやく書きしるそうとするときに、詩や絵は私の前にたち現れる。それはまるで、当意即妙の現場立会人にその場で出逢うような工合である。それにしても、この”出逢い”が往々にして私の一方的な思い違いにすぎなかったことをおそれる。
どうやら、私にとって散文は、これら現場立会人の証言や陳述をなぞりながら現場検証し、論証することで始まるもののようである。
(「後記」より)
目次
Ⅰ
- 予感
- 彼処には
- 無題
- オオ・ソレ・ミオ
- 砂漠にて
Ⅱ
- 仙人掌
- 寧日
- 胎動
- 讃
- 五月の歌
Ⅲ
- 何処にも
- 再生
- 魚の歌
- 高原にて
- 車窓にて
- 惜別
後記