1983年4月、横浜詩人会から刊行された弓田弓子(1939~)の第6詩集。装幀は堀場貞男。
昨年母を亡くしたせいでしょうか、近頃、死後の世界の有無について考えることがあります。毎晩、茶の間でいっしょにテレビを観ていた人の、肉体だけが消えているのですから、きっとあの世へ行ったのだ、と気楽に言ってしまうのですが、そんな時、脳裏に走るものがあります。壺いっぱいの母の骨です。
この世は一瞬だが、あの世は永遠なのだ、と仏門にある人が説いて下さいましたが、残された骨のことを思いますと、私はやはりこの世でけじめをつけようと決心します。
かつて命だった証明のように、あの大きな牙を残して死んでいく象の姿が、ふいに目の前をよぎりました。ほんとうは何も残したくないのだ、と言っているような気がしてくるのです。
(「あとがき」より)
目次
- 卵
- おばさんの月
- キキ
- 砂金
- かごしま
- 象牙の里
- 漁火
あとがき