1991年3月、藤田文江詩集「夜の聲」復刊委員会から復刻された藤田文江の詩集。カバー絵は片山昭弘。
言ふまでもなく私の詩は内的必然の結果として生れた。それ故私は自分の作品が生活内容の純粋な感覺的表現であるといふ事に就いて聊かの矜をもつものである。然しそれは決して思ひ上つての意味でない事を大方の諸氏によく解つて貰へるものと思ふ。おのれをめぐる木枯も亦耳を澄ませば甘美な音樂となつて私をつゝむのだ。兎も角私は一枚の小さなカードを残して更に苦しむべく下獄しなければならない。今詩集夜の聲を出すにあたつて今日までに受けたあらゆる人々からの恩恵を泌々と思ひ起してゐる。中でも親しく手をひいていたゞいた宮崎孝政氏と常に拍車をむけてくれた母上には、感謝の言葉もない位である。私は又自分を生かす為に多くのものを犠牲にしてきたそれ等のすべてに對しても心からの謝意を表したいと思ふ。
(「自序/藤田文江」より)
目次
- 夜の聲
- 黒いシヨールの女
- 誘惑
- 逝く夏
- 島!
- 或る手紙
- 秋
- 五月の竹林にて
- 遥かなる子守唄
- 疾む
- 疾む
- 信ずる
- 時雨の中
- 若葉の頃
- 若葉の頃
- 若葉の頃
- 泣いてゐるこども
- 水の上
- 鬱
- 憎悪
- 墓碑銘
- 荒淫の果ての孤独祭
- おのれに就いて
- 滅
- 日の中をゆく人
- 一輪車
- 一輪車
- 暁の陸
- 満潮
- 断片
- 病體
- 桟橋にて
- 北の窓
- 拒絶
- 棹さす
- 物語の序曲
- 無題
- 風に病む午前の日誌
・藤田文江のイマージュと現存(プレザンス)について
- 追憶・藤田文江 間野捷魯
- 二人の女人―藤田文江の死― 永瀬清子
- 藤田文江が再び現れたときに、謎は解ける 長谷川龍生