2012年4月、砂子屋書房から刊行された加藤治郎の第8歌集。装幀は倉本修。
本書は『雨の日の回顧展』に続く第八歌集である。二〇〇八年一月から二〇一二年一月にかけて発表した四三七首を収めた。四十八歳から五十二歳の作品である。
Ⅰ部では、早期退職が詠まれている。ちょうど「NHK短歌」の選者を務めることになり、退職と引き換えに五十代十年の時間を買うという選択はあり得た。紆余曲折の末、会社に留まることになったが、東京勤務となった。
Ⅱ部は、東京と名古屋の往反の日々が背景にある。結果、東京で東日本大震災に遭遇した。Ⅲ部である。高層ビルの無防備さ、通信の遮断、交通麻痺、帰宅困難、停電、食料不足、放射能汚染など首都壊滅の危機を垣間見た。あまりに脆いのだ。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 器
- 国境
- 日蝕
- 花野
- リスト
- ささやき
- 童話
- 朝の笹百合 笹井宏之君を悼む
- 風と光
- のぞみ
- 転身
- 遊園
Ⅱ
Ⅲ
- 首都
- ヘイト
- 石棺
- サイレンス
- メルトウォーター
- 寸寸
- Unknown
- 果実
- いりうみ
- 或る寒い日に
あとがき